フェンシングという静寂と動寂が交錯する競技において、選手が剣を交えるその背後には、何が映し出されるべきか。
本プロジェクトでは、第75回全日本フェンシング選手権大会のキービジュアルに加え、会場の巨大ビジョンを彩る「大会ロゴ」を制作。日本フェンシング協会様と共に、選手が最も輝き、観客がその一瞬に酔いしれるための「最高の舞台装置」としてのブランディングを追求しました。
【プロジェクトの概要】
クライアント:公益社団法人 日本フェンシング協会 様(東京都新宿区)
業種: スポーツ競技団体(競技普及・大会運営)
ご支援内容: 大会ロゴデザイン、キービジュアル制作、会場演出ビジュアル
背景: 既存のスポーツの枠に捉われない「ミステリアスな期待感」と「選手の多様な個性」を両立させた新しい大会像の構築。
プロジェクト期間: 約3ヶ月
【ご相談の背景と抱えていた課題:静かな競技に「動」の熱量を】
日本フェンシング協会様、そして武井壮氏が抱いていたビジョンは、フェンシングを「誰もが興奮する最高のエンターテインメント」へと進化させることでした。制作にあたり、現場からは以下のような極めて本質的な課題が提示されました。
- 「得体の知れない期待感」の創出: 「一体何が始まるのか?」という、観客の想像力を刺激するミステリアスな空気感が必要でした。
- 群像劇としての見せ方: 特定のスター選手一人をアイコンにするのではなく、出場する全選手が主役であり、それぞれの個性がぶつかり合う場であることを表現したい。
- 「渋谷」という記号性の活用: 決勝の舞台は、トレンドの発信地・渋谷。この街にふさわしい、モダンでエッジの効いた視覚言語が求められていました。
従来の「記録を競う場」としてのポスターではなく、「物語が始まる瞬間」を切り取る。これがfrontmanに課せられた使命でした。
【frontmanの提案・アプローチ:匿名性と色彩の共演】
私たちは、フェンシング特有の「マスク」という要素を、課題解決の鍵として再定義しました。
コンセプト:MASKED PASSION(仮面の奥に潜む情熱)
フェンシングは顔が見えない競技です。その匿名性は、一見すると「誰だか分からない」というデメリットに見えますが、私たちはこれを「誰がヒーローになってもおかしくないミステリアスな魅力」へと転換しました。
顔を見せない代わりに、背後から噴出する「カラー・スモーク」で選手個々の内なる情熱を表現。個性が爆発し、渋谷の地へ飛び出していくエネルギーを視覚化する戦略を提案しました。
【制作物とデザインのポイント:静と動の完璧な均衡】
本プロジェクトでは、動的な「キービジュアル」と、静的な「大会ロゴ」の二段構えでブランディングを構築しました。
キービジュアルに込めた「個性の爆発」

色彩のロジック: シアン、マゼンタ、イエローなど、混ざり合うことのない鮮やかな色を採用。これは、選手一人ひとりが持つ異なるバックボーンやプレイスタイルを象徴しています。これらが重なり合い、空間を埋め尽くす様は、まさに選手権という「個性が衝突する場」そのものです。
構図の工夫: 複数の選手が異なる方向へ剣を向ける群像構成により、特定の個人に依存しない「大会全体の熱量」を表現しました。
コピーの配置: 「この渋谷の地で、日本の頂点が決まる。」というコピーを、あえて縦書きでシャープに配置。渋谷というストリート感のある街と、武道に通じる精神性を融合させました。
具体的な造形の工夫(タイポグラフィとコントラスト)

計算されたコントラスト: 背景を漆黒(リッチブラック)に設定し、ロゴを純白で配置。ビジョンに映し出された際、発光する文字が逆光のような効果を生み、その前で戦う選手のシルエットを神々しく演出します。
文字の重なりとリズム: メインのロゴ(左上)「NEXUS presents」から「選手権大会」までを垂直に積み上げることで、日本一を決定する大会にふさわしい「トーテム(象徴)」としての威厳を持たせました。
可読性とインパクトの両立: 映像配信や遠くの客席からも一目で「全日本」であることが認識できるよう、文字の間隔(カーニング)を数ピクセル単位で微調整し、視認性を極限まで高めています。
舞台装置としての「大会ロゴ」
キービジュアルが「動」なら、ロゴは「静」の役割を担います。
- 視認性の極致: 黒背景に白抜きのタイポグラフィを採用。決勝会場の巨大ビジョンに映し出された際、文字自体が発光するフレームとなり、その前で戦う選手のシルエットを最も美しく引き立てるよう設計しています。
- 歴史と現代の融合: 75回という重みを感じさせる伝統的なセリフ体をベースに、伝統競技が進化し続ける姿勢をロゴ一つに集約しました。
【プロジェクトの成果】
この一連のクリエイティブは、大会の成功を象徴するアイコンとなりました。
- ステークホルダーの共感: クライアントからは「まさに求めていた空気感だ」と絶大な信頼をいただき、当時の武井壮会長からも高い評価をいただきました。
- 観客の期待感の醸成: 渋谷の街やSNSで展開されたビジュアルは、従来のファンだけでなく、感度の高い若年層へも届き、「今度のフェンシングは何か違うぞ」というミステリアスな期待感を現実のものとしました。
- 選手の誇り: 巨大ビジョンの前に立つ選手たちにとって、このロゴは「日本最高峰の舞台」に立っている証となり、競技パフォーマンスを支える精神的なインフラとしても機能しました。
【ブランディングが「場所」を「聖地」に変える】
今回の事例で証明されたのは、「デザインは、単なる装飾ではなく、その場の空気(コンテキスト)を作るものである」ということです。
キービジュアルで熱狂を呼び込み、ロゴで舞台の格を定義する。この一貫した体験設計こそが、ビジネスやイベントにおけるブランディングの真髄です。frontmanは、クライアントが持つ「まだ言語化されていない志」を、論理と感性の両輪で可視化します。
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